動物の皮膚病といっても様々なものがあります。また必ずしも皮膚病は単一なものではなく複合的にからみあっている場合が多いと思われます。つまりアレルギー性皮膚炎と診断されたとしても寄生虫、真菌症やマラセチア皮膚炎、内分泌疾患が伴っている場合もあります。痒みがあればなんでもアレルギーではなくその原因や増強因子も把握しておかなければ十分な治療はできません。

それと来院される患者さんの中には他でアレルギー性皮膚炎ではないのに不適切な治療をされて悪化している症例をみることがあります。検査による他の皮膚病との鑑別が非常に大事だと痛感させられます。

 

アレルギー性皮膚炎

現在犬で最も多く遭遇する皮膚病はアレルギー性皮膚炎だと思われます。猫にもありますが室内犬に多くみられます。アレルギーといっても認識が明確ではなく間違って解釈されていることもあるので最初に用語について解説します。

 

 アトピーとは:遺伝的にIgEを作りやすい体質。症状のない犬からでも検出されればアトピーである。

つまりアレルギーになりやすい素質があるということを指します。

 

 アレルギーとは:特定の異物に対する免疫反応が過剰に起こり、身体にとって不利益な症状が引き起こされた状態。症状がない状態で「アレルギーである」とは言わない。

 

 アレルゲンとは:アレルギーの原因となる物質。主にたんぱく質がアレルゲンとなる。

 

 アトピー性皮膚炎:人の診断名で、寛解、増悪を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ。

 

 犬アトピー性皮膚炎環境アレルゲンに対するIgEが関連した特徴的な症状と痒みを伴う皮膚炎。首や脇、下腹部や内股の慢性的な皮膚炎を特徴とする。食物アレルゲンによるものは含まれない。

 

 

    食物アレルギー:食物に対して起こる過剰な免疫反応と、それによる症状。犬ではIgEが関わるものとリンパ球が関わるものの2タイプある。

 

アレルギー性皮膚炎というのは広い意味で使われる病名であり、その中にアトピー性皮膚炎であったり食物アレルギー性皮膚炎であったり、その他すべてのアレルギーによる皮膚炎が含まれます。

  アレルギーは基本的には治らない病気なので、症状をうまくコントロールしながら付き合っていく必要があります。しかし薬で症状を抑える治療をするにしても漫然と高用量の薬を投与し続けることは避けなければなりません。なぜなら薬には副作用もあるからです。そのためにはアレルギーの原因をできるだけ減らし、それぞれの症例にあった対策を取り、副作用のある薬の量をなるべく減らしながら治療を行いたいと考えております。

 原因アレルゲンがわかれば、食事の変更や環境の改善をするだけで痒みを減らし薬の投与量を減らせるケースがあります。そのためには完全とはいえないまでもアレルギー検査をしてみるのも無駄なことではありませんし処方食を何種類か試してみるのも価値があると思います。

 

アトピー性皮膚炎

 

アトピーは環境中のアレルゲン特異性IgEの存在に限定されます。表皮のバリア機構障害により表皮をアレルゲンや微生物が通過し暴露されやすくなります。つまりアレルゲンに感作しやすくなります。

 

国際犬アトピー性皮膚炎調査委員会(ITFCAD)の定義

 「遺伝的要素が関与する炎症と痒みをともなうアレルギー性疾患であり、環境性抗原に対してIgE が関与することが最も一般的である」。

 

(以下はかなり専門的な内容となりますので興味あるかたのみご覧ください)

バリアー機構の障害というのは以下のとおりです。

○皮膚の角質層にある脂質の減少と崩壊。

○表皮セラミドと燐酸スフィンゴシン1の減少が表皮からの水分の蒸散を増加させたり細胞のシグナルを変化させる。

○フィラグリン(表皮の顆粒細胞で産生される塩基性たんぱく質の一種で角質層を形成)の変異。これが表皮からアレルゲン物質、微生物類、病原体関連分子パターンなどを通過させ免疫反応をより増強する原因となる。

 

遺伝的に細胞の反応性を高めるというのは以下のことを含みます。

○角化細胞によるTARCTSLPの生成増加はTh2リンパ球の反応を亢進させる。

○プロテアーゼとPAMPsを含む「danger signals」(警告兆候)の存在下で樹状細胞が抗原に暴露されるとT細胞の反応を促進するために活性化される。

○表皮で樹状細胞とランゲルハンス細胞が活性化する。

○CD4+とCD8+の比率の変化がTh1を超えてTh2を促進させる。アトピー性皮膚炎の制御性T細胞の役割は盛んに研究されている分野である。

○最大数の肥満細胞がアトピー性皮膚には存在する。

 

感受性の高い動物が再暴露されると痒みを起こす。そして表皮の障害が起こり、活性化した角化細胞がTARCTSLPその他のサイトカインの放出し表皮細胞へさらに反応免疫細胞の増強を促し炎症反応を促進する。

 

TARC:表皮角化細胞などで産生されるケモカインの一種。皮膚の病変部位などでTh2細胞を遊走させる働きがある。アトピーの悪化度の指標に使われる。

 

TSLP:上皮細胞が産生するアレルギー誘導性サイトカイン。樹状細胞やT細胞に作用することでTh2細胞の誘導に関与している。

 

PAMPs:病原体関連分子パターン。細菌やウイルスの構成成分のこと。

 

IgE の役割

IgEは1型アレルギーで必須な役割を果たす。

古典的な分類ではアトピーは環境中アレルゲンによりIgEが生成され炎症性皮膚炎を起こすこと。

しかしこのことは以下のことからまだ研究の余地があるといわれている、すなわち、

〇無症状の個体ではIgEレベルが上がっていることやアレルゲンに対する反応性が増加していることはIgEレベルの測定では探知できない。

〇IgEの生成はTh2 リンパ球増殖に影響される。

〇疾患の重症度はIgEのレベルによって予測できない。

〇非IgE抗体と遅発相反応はアレルギー疾患のさらなる進行を促すことがある。

 

Th1/Th2/Th17 /Treg とサイトカイン

アトピーはサイトカインの活性と生成のアンバランスによって起こる。

Th2活性はIgEの生成を増加させ炎症細胞を増員する。

慢性疾患におけるTh1とTregサイトカインが上昇することがわかっている。

痒みや炎症を起こすサイトカインとしてIL-2、IL-4、IL-6、IL-13、IL-31などがある。

 

IL-31とJAK/STAT

 

アトピーの皮膚ではIL-31レベルが上昇することが報告されている。これは犬で痒みを起こす。

IL-31をブロック(抗体で中和する)するか神経レセプターのブロック(JAK1抑制因子)はアトピー性皮膚炎の臨床兆候を緩和する。

 

以下のことを踏まえてまとめると

○バリア機構障害や免疫調整異常がある動物は環境アレルゲンに感受性をもつ。

○繰り返しアレルゲンに暴露されると(主に経口よりも皮膚を介して)過敏反応を起こし、炎症媒介物質が放出される。この媒介物質はヒスタミン、ヘパリン、タンパク質分解酵素、ロイコトリエン、セロトニン、サイトカイン、ケモカインその他多くの物質が含まれる。

○累積された起痒性(痒みを起こす)因子(昆虫、食物、環境アレルゲン、細菌、酵母抗原)は個々の閾値を下げ、ある動物では一貫した臨床兆候や間欠性の臨床兆候を起こす。

 

(臨床症状)

犬:病変部位には炎症性丘疹や蕁麻疹が起こることがあるが、主な皮膚の病変は主に自傷だと言われています。病変部は指間、肉球の間、手根部、足根部、口唇、鼻鏡部、眼周囲、耳介部、脇下、脇腹、会陰、そけい部など。

 被毛は乱れて唾液で変色していることもあり、炎症、丘疹、発疹、蕁麻疹、痂皮、脱毛、色素沈着、苔癬化、油症もしくは乾燥肌などの脂漏症、多汗症がみられる。

 皮膚の細菌叢は上皮の黄色ブドウ球菌のコロニー化が進み、2次的な膿皮症が起こる。

2次的に酵母菌の皮膚感染が発症する。再発性の慢性の外耳炎が起こる。2次的な眼瞼炎を伴う結膜炎を起こす。鼻炎。

猫:粟粒性皮膚炎。舐性脱毛。顔面表皮剥離。頭部と頚部の脱毛。外耳炎。アレルギー性の喘息。好酸球性肉芽腫、プラーク。

 

 (診断)

発症が3歳以下。ステロイドにより抑制される痒み。慢性もしくは再発性の酵母菌感染。前足と耳介に病変がある。腰仙部には病変がない。

 血清アレルギー試験:アレルゲン特異IgE抗体を測定する。擬陽性が出る欠点がある。

毛をそったり鎮静や麻酔をする必要がない長所がある。

 皮内試験:皮内にごく少量のアレルゲン物質を注入する。円形の反応部位の大きさを測定する。偽陰性はステロイド、抗ヒスタミン剤、精神安定剤、著しいストレスなどで出ることがある。擬陽性は刺激物、混入したアレルゲン物質など技術的なことによる。シクロスポリン、オクラシチニブ、IL-3抗体による中和によっては影響を受けない。

 皮膚生検:バイオプシーは最も便利な痒みの原因を診断する方法である。

表在性血管周囲性皮膚炎、汗腺の拡張、海綿状変化などが見られる。好酸球性上皮微細膿疱が見られるときは環境アレルゲンに接触したと推測できる。

 

(治療)

はじめに動物アレルギー性疾患国際委員会(ICADA)による犬アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2015をあげておきます。

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急性の発赤への対処(軽度~中等度

 季節性、発赤、紅斑、表皮剥離、丘疹

  悪化要因の除去:アレルゲンの除去(ノミ、食事など)

  二次感染の治療:抗菌剤など

  皮膚と被毛のケア:非刺激性シャンプー

  薬物治療:局所性(外用グルココルチコイド)

       全身性(経口グルココルチコイド)

慢性のアトピー性皮膚炎に対する治療(中等度~重度)

 通年製、紅斑、苔癬化、色素沈着、自傷性の脱毛

  悪化要因の除去:アレルゲンの除去(ノミ、食事など)

  二次感染の治療:抗菌剤など

  皮膚と被毛のケア:非刺激性/抗脂漏/殺菌性シャンプー、必須脂肪酸

  薬物療法:局所性(外用グルココルチコイド、タクロリムス)

       全身性(経口グルココルチコイド、シクロスポリン、

       オクラシチニブ、インターフェロン)

       グルココルチコイド減薬のため抗ヒスタミン剤、

       必須脂肪酸を検討

  再燃予防:悪化因子除去、外用グルココルチコイド、減感作療法

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皮膚バリアー機構の正常化

 定期的なシャンプー、コンディショナーなどを併用する場合もある。

セラミド、エセンシャルオイル、必須脂肪酸、フィトスフィンゴシンの外用。

 コルチコステロイドの外用。必須脂肪酸(オメガ3など)の供与。EPA使用。

アレルゲン特異免疫療法

 対象のアレルゲン物質を徐々に暴露させることで感受性を低下させる。

犬と猫で60-80%の効果がある。反応は徐々に表れる。

コルチコステロイド

 最も効果のある方法。痒みに応じて漸減していく。注射による長期持続型ステロイドの投与は避けるべきである。

シクロスポリン 

 免疫細胞のサイトカイン誘導活性を抑制する(特にリンパ球、ランゲルハンス細胞、肥満細胞、好酸球など)。安全性が高いことが証明されている。単独でステロイドの使用を回避できる。4-8週間後に投与を漸減できる。

猫の場合はFIV/FeLV陰性でなければ使用できない。

ヤヌスキナーゼ抑制剤(JAK)

 オクラシチニブ:JAK1抑制薬。IL-31サイトカイン機能を抑制することで痒み神経をブロックする。再発性の外耳炎や膿皮症にはあまり効果がない。

免疫抑制剤と併用はしないほうがよい。現在は犬のみで承認されている。

抗ヒスタミン剤

 効果は様々である。作用はコルチコステロイドより劣る。必須脂肪酸と併用することで相乗効果がある。

犬インターフェロン

 組替え犬インターフェロン-γ(rCaIFN-γ)は、動物アレルギー性疾患国際委員会(ICADA)による犬アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインに上げられている。血清中IgE量、IL‐4を低下させ症状を改善させる報告がなされている。またこの製剤は、元来、体内にあるインターフェロン-γの合成薬であるがヒト用のインターフェロン製剤で生じるようなQOLを低下させるような副作用は見られないことから、安全性の高い薬剤といえる。

その他

 抗精神薬など。

 

食物アレルギー性皮膚炎

皮膚食物有害反応のうち免疫に関係するもの。季節に関係なく症状が発現しステロイドの治療に反応しにくいという特徴があります。

 食物中の糖蛋白に反応し即時、遅延反応を起こすといわれています。即時型では

1型反応で遅延型は3もしくは4型反応です。

 感作は消化管粘膜で起こります。消化管の寄生虫や感染などは腸粘膜バリア機構に障害を与えアレルゲンの異常な吸収や2次的な感作や不耐性を起こします。

   皮膚表面での食物アレルゲンの暴露はバリア機構の障害によって起こりやすく食物蛋白に対する感受性を高めます。これらの感作は環境アレルゲンと交差性があることがわかっています。

 

(臨床症状)

耳、足、そけい部、腋部、顔面、頚部、会陰部など局所や全身に症状がでる。自傷行為が脱毛、擦創、表皮剥離、色素沈着、苔癬化などを起こす。

二次的には表皮膿皮症、マラセチア皮膚炎、外耳炎などは一般的である。

他には肢端舐性皮膚炎、慢性脂漏症、化膿性外傷性皮膚炎などがあります。

10-30%に消化器症状(嘔吐、下痢など)が起こると報告されている。

 

(診断)

○再発性の外耳炎を伴う場合もある肛門周囲皮膚炎が最も一般的な食物アレルギーの臨床症状である。

○10-12週間の除去食試験に対する反応をみる。

○誘発試験:除去食に単一の材料(アレルゲンを含むと思われるもの)を添加して

10日以上与えて反応をみる。

 

(治療)

反応する食物を除去する(除去食を数種類交代で与えて反応をみる)。

○除去食以外の食べ物を一切あたえないこと。

○食餌療法の効果が出るまで2次的な皮膚疾患の治療として抗生物質、抗真菌剤、痒み止めなどを投与する。

○定期的なシャンプーは皮膚についた細菌、酵母菌などを減らし上皮のバリア機構を正常化する。

○食餌療法の効果が出てきた後半にはステロイドや抗ヒスタミン剤の投与を中断して皮膚の症状を評価する。

 

*猫についてはアレルギー性皮膚炎についての病名が統一されていないため

猫アトピー症候群(feline atopic syndrome)という名称や過敏性皮膚炎

(hypersensitive dermatitis)とくにアトピー性アレルギー性皮膚炎は非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎(non-flea non-food induced hypersensitivity dermatitis:NFNFIHD)と呼ばれることもあります。

 

ノミアレルギー性皮膚炎

犬、猫に寄生している90%以上が猫ノミだと言われています。ノミは吸血する際に唾液を寄生動物に注入するのでアレルギー反応を起こします。ノミの唾液にはヒスタミン様物質や数種類の完全抗原、完全抗原をつくる数種類のハプテンを含んでいます。これにより寄生された動物は1型(即時型)および4型(遅延型)、CBH(皮膚遅延型好塩基球アレルギー反応)などを起こします。

 

(臨床症状)

犬:腰仙部、尾部、大腿部などに痒み。外傷性膿皮症。外傷性毛包炎。繊維掻痒性の結節。

猫:腰仙部や頭部、頚部の粟粒性皮膚炎。腹部や大腿部の脱毛。

 

(診断)

バイオプシー、アレルギー試験、他の痒みの原因の排除、糞中の瓜実条虫の体節の確認、ノミ駆除の反応を確認。

 

(治療)

ノミ駆除、予防を徹底すること。ノミ駆除剤を使用すると共に環境を清浄化すること。

〇痒みを減らすために局所にはステロイドの外用。

〇プレドニゾロンの内用療法。

〇膿皮症など細菌性皮膚炎がある場合は、抗生物質の投与。

〇抗ヒスタミン剤も多少効果がある場合もある。

 

 

 

マラセチア皮膚炎

マラセチア(Malassezia)は、真菌の中で担子菌類に分類される出芽酵母です。犬や猫に関連しているのはM.pachydermatisで、皮膚および耳、口、肛門周囲粘膜の表面に皮膚の常在菌と共生しています。無害な共生状態が病原性をもつようになるメカニズムは詳しくわかっていませんが、アレルギー、脂漏症、先天的な内分泌因子が関連しているものといわれています。つまりマラセチア皮膚炎はなんらかの素因により2次的に生じる疾患だと思われます。

 マラセチアが分泌する多量の脂質分解酵素や、分解により生じた脂肪酸(オレイン酸など)が表皮内に浸透することにより表皮角化細胞を刺激し、炎症性サイトカインを分泌させ皮膚炎を起こします。さらにマクロファージが菌体成分を取り込み、リンパ球へ抗原提示してアレルギー性皮膚炎へ発展すると考えられています。マラセチア特異性IgGとIgEがアトピー性皮膚炎の犬で高かったことからアトピー性皮膚炎の病因の一つになっているかもしれません。

 

(臨床症状)

(犬の場合)

好発部位は、外耳、口唇、鼻、肢、指間、首の腹側、腋、内股、会陰部。

主な症状は、紅斑、痒み、色素沈着、脱毛、脂漏、フケ、苔癬化、外耳道の肥厚、臭気が認められる。爪周囲炎は爪が赤茶色に変色する。

これらの症状は犬アトピー性皮膚炎と類似するため、マラセチア性皮膚炎とアトピー性皮膚炎は複雑に関与していると考えられる。またマラセチア皮膚炎は特異的な症状は見当たらず、症状だけで鑑別することは難しい。

(猫の場合)

顔面の痒み、あごのアクネ。

 

(診断)

〇スコッチテープなどを捺印したものをスライドガラスに貼り付け、染色してマラセチアの有無を評価する。ただマラセチア皮膚炎の病態は多様であるので菌体の数だけですべて評価できるわけではない。

〇病因となる疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群)があるかどうか確認する。

〇抗真菌剤を投与して効果があるかどうか確認する(治療的評価)。

〇マラセチア-アレルゲン特異的な皮内反応試験をする(日本ではあまり行われていない)。

〇IgE血清検査:マラセチア-アレルゲン特異的IgEを測定する。

〇菌培養:日本ではあまり行われていない。

 

(治療)

外用療法:抗真菌剤(クリーム、軟膏、ローション、スプレー)

 の直接塗布。

薬用シャンプー:抗真菌、抗菌成分を含有するシャンプーを定期的に

 実施する。

全身性抗真菌療法:イトラコナゾール、ケトコナゾール、テルビナフィン

 などの内用療法。

二次的変化に対する治療:マラセチアの増殖により皮膚に様々な変化が出て来るので必要に応じて他の治療を併用する。

 

*詳しくは当院へご相談ください。

 

細菌性膿皮症(Bacterial  Pyoderma)

膿皮症(Pyoderma)は化膿性の皮膚疾患であり、獣医学では表在性、深在性の皮膚細菌感染症をさします。その中で様々な分類がなされています。

(分類)

表面(細菌の表皮での過剰繁殖およびコロニー化)

 間擦疹(Intertrigo)

 急性湿性皮膚炎(Acute moist dermatitis:hot spot)

表在性膿皮症(表皮と毛包での細菌感染)

 膿痂疹(Impedigo)

 粘膜皮膚膿皮症(Mucocutaneous pyoderma)

 犬表皮剥離性膿皮症(Canine exfoliative  superficial pyoderma)

 表在性びまん性膿皮症(Superficial spreading pyoderma)

 表在性細菌性毛包炎(Superficial bacterial folliculitis)

 粟粒性皮膚炎(猫)(Miliary dermatitis in cat)

深在性膿皮症(毛包の破壊と真皮や基底層までの感染)

 口周辺毛包炎と癤腫症(あごアクネ)(Muzzle folliculitis and     furunculosis:chin acne)

 鼻膿皮症(Nasal pyoderma)

 肢および指間癤腫症/結節(Pedal pyoderma and interdigital     furunculosis/nodules)

 全身性深部膿皮症/蜂巣炎(ジャーマンシェパード、家族性)

    (Generalized deep pyoderma/cellulitis)

 細菌性肉芽腫(肢端舐性皮膚炎/癤腫症)(Bacterial granulomas)

 圧迫点(圧迫部分)膿皮症(Pressure point pyoderma)

 化膿性外傷性毛包炎と癤腫症(Pyotraumatic folliculitis and   furunculosis)

 

 (その他特徴など)

急性湿性皮膚炎(Acute moist dermatitis:hot spot):自傷行為により2次的に表皮に細菌感染を起こしたもの。

間擦疹(Intertrigo):皮膚の状態によって慢性的に湿性になることにより起こる(skinfold dermatitis)。

膿痂疹(Impetigo):幼犬の膿痂疹、老犬の水泡性膿痂疹。

粘膜皮膚膿皮症(Mucocutaneous pyoderma:MCP):特発性の潰瘍性粘膜皮膚炎。様々な程度の色素脱がみられる。

表在性膿皮症(Superficial pyoderma):丘疹、膿疱、表皮小環、色素沈着斑。虫食ったような被毛。アトピー性皮膚炎(または様の)の2次的な症状。

犬表皮剥離性膿皮症(Canine exfoliative superficial pyoderma)

表皮びまん性膿皮症ともいう。広い癒合した表皮小環が体幹に沿ってあり、毛包間丘疹が存在する。コリーやシェルティーに多い。

深在性膿皮症(Deep pyoderma):あご、鼻鏡部、褥そう、足。

グルーミング後癤腫症(Postgrooming frunculosis):シャンプーやグルーミングの後に急性の痛みを伴う深在性膿皮症である。グルーミング後の24-48時間後に発症する。背部正中線によくみられる。

細菌過剰症候群(Bacterial overgrowth syndrome:BOG):皮膚表面での黄色ブドウ球菌類の過剰繁殖によるもの。菌体毒素が炎症反応を引き起こす。クロラムセンシング(定数感知)がこの疾患の素因だといわれている。主に痒み、紅斑、苔癬化が認められる。しばしばアトピー性皮膚炎に伴うマラセチア異常繁殖に関連する。局所シャンプー療法が有効だとされている。

 

(診断)

危険因子を識別することで、つまりは

 アレルギー(ノミ、アトピー、食事性、接触性など)

 真菌感染

 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群、性ホルモ

 バランス失調など)

 免疫不全

 脂漏症

 外傷など

診断テスト

 全身理学的検査、皮膚かきとり検査、皮膚真菌培養検査、皮内アレルギー

 反応試験、内分泌検査、血液生化学検査、皮膚バイオプシー、細胞診断。

 

(治療)

〇それぞれの症状に応じて適切な外用療法、内用療法を行います。

 当院ではできる限り最新かつ症状にあった治療を心がけておりますので

 詳しくはご相談ください。

 

内分泌疾患による皮膚病

犬、猫において内分泌異常により様々な皮膚疾患を起こします。内分泌疾患のページでも述べていて重複しますがあらためて述べてみたいと思います。

 

クッシング症候群(犬)

特発性副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、内因性のグルココルチコイド(主にコルチゾール)が慢性的に過剰になることで症状を呈する症候群です。下垂体性クッシング症候群(PDH)と、副腎腫瘍(AT)にわけられます。

また、グルココルチコイド製剤の長期投与によってクッシング症候群と同様の症状を呈するようになったものを、医原性クッシング症候群(iatrogenic

Cushing's syndrome)と呼びますが、通常は特発性のものを指します。

犬ではよくみられる内分泌疾患でメスに多く、中年から老齢で発症するケースが多いと言われています。

(症状)

〇多飲、多尿:グルココルチコイドが抗利尿ホルモン(ADH)の分泌を抑制するため。

〇食欲亢進

〇腹部膨満

〇肝腫大:グリコーゲンの取り込みを促進する。

〇脱毛:両側性の体幹の脱毛(頭部、四肢は除く)。

〇皮膚の菲薄化:表皮の入れ替わり/再生の減少による。

〇静脈拡張:細い血管が浮き出て見えるときがある。

〇ニキビダニ:免疫抑制のために発症する場合があるが稀有である。

〇傷が治りにくい:グルココルチコイドが炎症反応を抑制するため。

〇にきび:ケラチンがつまった毛穴で白いのと黒いのがある。ニキビダニを伴う場合もある。

〇皮膚石灰化:真皮や皮下組織にカルシウムの沈着と蓄積。触れる荒い結節や斑。黄色からピンク色。背部から首にかけて広い癒合した斑が目立つ。

軽度な場合には腹側の間擦部(腋窩、そけい部)に認められる。

〇細菌性毛包炎(膿皮症)

〇皮膚以外の組織での栄養障害石灰化が起こる。

〇筋衰弱と菲薄化:過度の蛋白異化と筋肉の損失。

〇無発情 性ホルモンの分泌障害。

〇肛門周囲腺腫:アンドロゲンの分泌過剰。

〇パンティング:呼吸筋が減少するのと腹部膨満のために胸腔が圧迫される。

〇色素沈着:ACTHにはメラニン細胞刺激ホルモン類似の作用がある可能性がある。

〇盲目など:巨大腺腫による視交差の圧迫。

〇中枢神経系のサイン:痙攣、旋回運動、行動の変化、体温調節の異常、昏迷、運動失調、死亡など。脳下垂体の巨大腺腫のため。

(診断)

〇好酸球減少、リンパ球減少、好中球増加、赤血球増加、血小板増加。

〇ALKP80%で上昇。ALTの緩やかな上昇。高コレステロール血症。糖尿病を併発していれば(5-10%)高血糖。BUNの低値。

〇尿比重の低下(<1.018)。蛋白尿。血尿。膿尿。細菌性尿。

〇尿コルチゾール-クレアチニン比(UCCR)

〇腹部レントゲンで肝腫大。胸部レントゲンで気管支の石灰沈着。

〇エコー/CT/MRI:下垂体性(PDH)と副腎腫瘍(AT)を鑑別できる。

〇病理検査

〇スクリーニングテスト:ACTH刺激試験など。

(治療)

内分泌疾患のページに紹介したが、一部を詳しく述べる。

トリロスタン

〇3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素を可逆的に用量依存的に阻害する不活性ステロイド類似化合物である。

〇コルチゾールとアルドステロンの生成を抑制する。

〇副作用としては、嗜眠、食欲不振、嘔吐、脱水、衰弱、低ナトリウム血症と高カリウム血症。

〇吸収を最大にするために食事と一緒に与える。

〇妊娠中の動物、および腎臓病、肝臓病、明らかな貧血があるときには投与してはいけない。

〇エストロゲンの受容体をブロックするので副腎からの性ホルモン濃度を増加させる。よって繁殖動物に使用してはいけない。

〇投与は一日一回もしくは分割して2回にする。投与量は諸説あるが低用量から始めるパターンが増えている。

〇用量はACTH刺激試験によって定める。

〇おおよそ一週間で効果があらわれる。

〇投与開始から1-2週間後にACTH刺激試験をおこなう。この場合、薬剤投与後2-4時間後におこなうことが望ましい。

〇ACTH刺激試験は治療後、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に実施する。

コルチゾール値が安定したら3-6ヶ月毎にモニターする。

〇ナトリウムとカリウム血中濃度をモニターする。

 

 

甲状腺機能低下症(犬)

この疾患は犬の内分泌疾患で最もよくみられるものの一つです(250頭に1頭という報告もあります)。甲状腺ホルモンは皮膚の成熟と毛包サイクルの成長期に必用です。甲状腺ホルモンのうちT3と呼ばれるものは生理活性があり、T4と呼ばれるものはこのホルモンの前駆体です。甲状腺ホルモンは蛋白結合しており1%以下がフリーで存在しています。結合していないホルモンのみが細胞を通過し生理活性をもちます。

 原発性甲状腺機能低下症には2種類あり、自然発生的なものと、後天性のものがあります。後天性のものが90%以上を占めており、原因としては、甲状腺組織が置換したり破壊されること、リンパ球性甲状腺炎(犬で最も多い原因)、甲状腺の免疫介在性破壊、特発性の甲状腺萎縮、甲状腺抗原への自己抗体(抗サイログロブリン抗体)などがあります。自然発生的なものには、甲状腺の非形成、発育不全、内分泌障害などがあります。

 2次的な甲状腺機能低下症の中で自然発生的なものには脳下垂体からTSH(甲状腺刺激ホルモン)が分泌できないケースがあります(萎縮や腫瘍)。また、後天性のものには、下垂体腫瘍、医原性、副腎皮質ホルモン過剰症などの疾患などがあります。

 ヨウ素不足の食事性のものはあまりありません。またステロイドホルモンの異常により活性型T3への変換障害やrT3への変換上昇などの原因もあります。

(臨床症状)

全身性の症状:倦怠、運動不耐性、肥満、末梢神経障害、全身性筋障害、喉頭麻痺、巨大食道、角膜リピドーシス。

皮膚の変化(被毛の変化は40%以上でみられる):荒れた被毛、抜けやすい毛、毛刈りした後なかなか新しい毛が生えてこない、毛色の変化、最初は斑状で左右対称に脱毛する。

進行した皮膚の症状左右対称性脱毛。一般的に体幹で、ときに頭部や四肢に及ぶ。外耳の脱毛と鱗癤。尾の脱毛(ねずみのしっぽ様)。水腫状の皮膚(粘膜水腫とムチン沈着症)。悲しそうな顔の表情。角質増殖性または脂漏性皮膚炎。脱毛部に色素沈着、苔癬化、面皰(にきび)。細菌性毛包炎。

再発性の膿皮症:T細胞機能と液性免疫機能の低下。

マラセチア皮膚炎

アカラス

外耳炎

傷の治りが遅い

紫斑

2次的な皮膚感染症がなければ痒みは一般的ではない。

(診断)

非再生性貧血

高コレステロール血症(75%以上)、高トリグリセリド血症

Total T4 : 蛋白結合型T4と遊離T4の両方合わせたもの。標準値より低い場合で臨床症状がある場合は、甲状腺機能低下症が診断される。

 甲状腺機能正常症候群(甲状腺機能は正常でもT4が低値を示す疾患)

 T4低値を示す疾患:加齢、飢餓、長期ストレス、悪性腫瘍、腎不全、肝不全、全身もしくは皮膚感染症、糖尿病、クッシング症候群、アジソン症。

 T4低値を示す薬剤:グルココルチコイド、フェノバルビタール、NSAIDs

fT4:併発している疾病に影響されにくい(クッシング症候群は除く)。

 この試験のみでの判定は好ましくない。あくまでT4と同時に測定することが望ましい。

〇T3は広く変動するので甲状腺機能の正確な指標にはならない。つまり甲状腺機能低下症の犬でも正常なT3を示すことがある。

TSH:特異性は高いが感度は低い。低値のT4と高値のTSHは甲状腺機能亢進症の診断になる。

TSH刺激試験:甲状腺機能低下ではTSH投与前と後でT4が低値を示す。

(治療)

レボサイロキシンナトリウム:合成T4である。投与開始から2-4週間後に臨床症状を観察し、服用から4-6時間後の血中T4値をモニタリングする。

T4値と臨床症状から投薬量を増減する。グルココルチコイド、NSAIDS、フロセミドなどは吸収を促進するので使用には注意が必要である。

定期的なモニタリングが必要で、生涯の投薬が必要である。

食事療法:高脂血症があれば脂肪制限食を考慮する。ヒルズ(メタボリックス)、ロイヤルカナン(満腹感サポート)など。

 

 

 

 

脂腺炎(Sebaceous Adenitis)

脂腺炎とは脂腺に対する炎症性の疾病過程です。

特発性、遺伝性、免疫介在性、代謝などの原因があります。

若令から中年にかけて発症し、雄犬の方に多いと言われています。猫ではまれです。症状の違いから長毛種と短毛種ふたつの型に分けられます。

(症状)

長毛種:初期には背側正中線と頭部背側に病原が見られる。被毛の色の変化。直毛になる。対称性、部分的な脱毛が広がる。もっさりとした痛んだ被毛。毛包円柱はしっかりとこびりついた銀白色の鱗癤でしばしば背側正中線と頭部にみられる。脱毛や鱗癤のついた被毛が尾部にみられラットテイル(ネズミの尻尾)のような外観を呈する。2次的な細菌性毛包炎や掻痒、悪臭がみられる。

短毛種:虫食い状に脱毛があり、円形から蛇行状に癒合している。

病変部位は紅斑がある。体幹、頭部、耳介部に発生する。2次的な細菌性毛包炎はめずらしい。

:初期は頭部や耳介部だが全身にわたることもある。欠毛症(減毛症)は脱毛や鱗癤に進行する。黒い脂っこい組織片が眼の縁、鼻の皺、肛門周囲にできる。2次的細菌性毛包炎。

(診断)

〇かきとり検査:陰性

〇皮膚糸状菌培養:陰性

〇内分泌試験:陰性

〇皮膚バイオプシー検査で確定診断:

 結節性から化膿性の肉芽腫炎症反応が脂腺に起こる(毛包の峡部)。正常角化性角質増殖と毛包円柱の形成(長毛種で顕著)。進行した場合には脂腺の完全消失。毛包周囲の肉芽腫と繊維化。毛包と毛包付属器の破壊はまれである。

(治療)

局所療法

〇抗菌や角質溶解性シャンプーを週2回行い、保湿剤(コンディショナー)を塗布する。

〇保湿剤は毎日もしくは鱗癤を柔らかくするためにシャンプー前につけてもよい。

〇ベビーオイルは皮膚からの水分喪失を防ぎ、付着した鱗癤をとる働きがある。

〇精製油の入った脂肪酸を局所に滴下する。

全身療法

〇シクロスポリン5mg/kg 一日1回もしくは2回

〇抗生物質 テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど。

〇必須脂肪酸サプリメントなど。

〇ビタミンA   一日1回。

〇抗生物質 セファレキシン 一日2回。

 

生涯の治療を必用とする。発毛の具合はケースにより様々であり元の毛質にもどらないこともある。脂腺は完全に崩壊したら元には戻らない。